コアコンディショニングシンポジウム2003 |
日本のスポーツの現場から生まれた、フォームローラー(ストレッチポール)のエクササイズ体系を、「コアコンディショニング」と呼び、理学療法、フィットネス、医療などの様々な分野で使われている事例が紹介されました。 開催に先立ち、JCCA会長の岩崎由純氏(NECレッドロケッツトレーナー)は、「アメリカでの使われ方と同じように、最初はバランス感覚を鍛えるために使っていたのですが、選手の使い方をみていると、癒しの効果があるのではないかと思い始め、また実際にそのような声が聞かれました。 この新しい使い方が広がってきまして、このようなシンポジウムが開催されるに至りました」と挨拶しました。 続いて斎藤明義氏(日本大学医学部整形外科)が、「よいものである、という例ばかりではなく、この場合はダメとか、合併症があるというような指摘があるような会にして欲しい」と話しました。 基調講演として、苅安誠氏(九州保健福祉大学保健科学部)が、「嚥下と音声」をテーマに、解剖と機能について解説。 さらに、呼吸制限のモデルケースとして、パーキンソン病患者を対象に、フォームローラーエクササイズがどれほどの効果をもたらすかについて実験しました。 その結果、より大きな声を出すことができたり、長く発声できるようになったとのこと。 「今後も、吹き矢などの新しいツールとも組み合わせながら、呼吸・発声について研究していきたい」と述べられました。 同様に、渡辺なおみ氏(古賀総合病院リハビリテーション技術部)が、パーキンソン病患者に対してエクササイズを実施することによって、動きが良くなる、という点で研究内容を発表しました。 いかにして力を抜くか、という点に関して非常に苦労をしてきたそうで、フォームローラーエクササイズを用いて、姿勢障害のみられるパーキンソン病の症状改善に結びつけようと試みたとのこと。 筋がリラックスしたことによって、歩行スピードや呼吸機能に改善が見られるのではないか、と述べ、今後の研究が期待されます。 プログラムの合間には、リフレッシュも兼ねて、コアコンディショニングエクササイズのデモンストレーションが行われました。 尾陰由美子氏((有)アクトスペース)を中心とするインストラクターによる指導を受けながら、参加者は配られたハーフカットのローラーを使って、座位でのエクササイズを行いました。 実施前後の立位体前屈、体幹の回旋などのセルフモニタリングを通じて、改めて効果を実感した参加者もいたようです。
トレーニングと言うよりも癒しの効果の高いベーシックセブンを取り入れた内容は、スーパー銭湯利用者に好評だそうです。さらに、井村康志氏(藤田保健衛生大学病院)は、交通事故後の頚部、あるいは肩関節障害、腱鞘炎などに対してエクササイズを実施した結果を発表。 継続して行っていく必要性があるものの、代替療法の選択肢としてコアコンディショニングの可能性を示しました。 日暮清氏(横浜F・マリノス)は、ヒトの成長過程の順番にエクササイズを組み立てることの重要性についてビデオ発表。 「最初、仰向けで手を動かしたり、うつ伏せになり、寝返りを打てるようになると、両肘で体重を支え、さらに両手をついて体重を支えるようになります。 この成長過程に沿って、リハビリテーションのメニューを構成しています」。 プロのサッカーチームの現場で試行錯誤しながら考案されたエクササイズの数々は、非常に多岐にわたるものでした。 シンポジウム後の懇親会では、岩崎会長、日暮副会長による挨拶、参加したマスタートレーナーによる簡単な自己紹介が行われました。 今後は、指導者養成コースの展開により、指導者が増加し、こうしたシンポジウムや研究会の成果とともに、指導内容も一層充実していくことが期待されます。 指導者養成のカリキュラム、日程については、日本コアコンディショニング協会のサイトをご覧下さい。 シンポジウムプログラム 挨拶 会長 岩崎由純 基調講演 「呼吸機能(の低下・改善)と音声・嚥下との関係」 苅安誠(九州保健福祉大学保健科学部言語聴覚療法学科助教授) デモンストレーション 「座位で行うコアコンディショニングエクササイズ」 尾陰・大山・安藤・漆崎・井門・山下 基調講演 「パーキンソン症候群における運動療法事例」 渡辺なおみ(古賀総合病院、理学療法士) 事例報告(1) 「フィットネス現場からの改善例」 有吉与志恵((株)ハースコーポレーション代表) 事例報告(2) 「ストレッチポールの使用状況と将来展望」 井村康志(藤田保健衛生大学病院麻酔科、鍼灸師) 基調講演 「横浜マリノスにおけるストレッチポールを使用した臨床」 日暮清(横浜F・マリノスヘッドトレーナー) 設立趣旨 「設立までの経緯と今後の展望」 会長 岩崎由純 (敬称略) |