成長段階に沿ったエクササイズの組み立て |
今回、横浜F・マリノスヘッドトレーナー、日暮清氏にお話を伺いました。 日暮氏は、日本で本格的にフォームローラーを使い始め、岩崎由純氏(NECレッドロケッツトレーナー)とともに、ベーシックセブンなどのエクササイズを考案しています。 日本コアコンディショニング協会副会長でもあり、『フォームローラーエクササイズ』の翻訳にあたるなど、フォームローラーを用いたエクササイズの普及に力を注いでいます。 「フォームローラーやバランスボールなど、シンプルな形状の器具は、工夫の余地があって楽しい」と語る日暮氏の試行錯誤によって、多彩なエクササイズが工夫されてきたと言えます。 成長段階に沿ったエクササイズ 日暮氏には最近、子どもが生まれ、赤ちゃんの頃からの動きを観察していくと、ヒトの成長過程は、実はコアに注目したエクササイズそのものなのだ、ということに気がついたそうです。 「ビデオで撮影してあるのですが、最初は仰向けで、首を動かすだけだったのが、首がすわり、手足をばたばたさせたり、寝返りを打つようになります。 その後、肘で身体を支え、背中を反り返らせるような動作をし、やがて手のひらで体重を支えられるようになります。これを毎日、1日中やっているのです。 私もやってみましたが、数時間で激しく筋肉痛になりました。 このようにして、ヒトは誰もが、赤ちゃんの頃に、立ち、歩くために必要な筋力をつけているのです。 この時期、自然に鍛えられている部位はコアと一致すると思います」。 コアから末端へ このようにして、ただ遊んでいるだけのようにみえても、必要な筋力と身体の動かし方を身につけます。 やがて、膝立ち、片膝立ち、つかまり立ち、立ち、伝い歩き、歩くというように、成長段階を上がっていくのです。 バランス感覚も鍛えられていきます。 立てるようになると、スクワットやデッドリフト、カーフレイズのような動きを始めます。 「教えもしないのに、不思議ですよね。立つためには、コアがきちんと機能していなくてはならないのです。通常健康であれば意識せずとも立てるので、この当たり前のことを忘れがちになります。ほとんど意識できません。そこで、『部分を鍛えればいい』という発想になってしまい、その結果、身体をうまくコントロールできずにいるのではないでしょうか。姿勢を保つことすらできない場合もあり、これが様々なトラブルの原因になることがあります」。 手根管圧迫症候群の症例 日暮氏は、アメリカのスポーツメディスンクリニックでの勤務経験があります。 「手根管圧迫症候群の患者をみたことがあります。患部に超音波やアイシング、温熱療法をしてもなかなかよくならないのです。フォームローラーを使って、頸部や肩の周辺、体幹部をゆるめてからようやく、治療に反応し始めたというケースがありました。結局、姿勢が悪いために、腕神経叢に過度の負担がかかっていたのでしょう。コアのコンディショニングをおろそかにして、局所を治療しても効果が薄いということがわかりました」。 このような経験から、現在のサッカー選手に対するリハビリテーションも、コアをきちんと鍛えてから、患部へというアプローチを取っているそうです。 ■成長段階に沿ったフォームローラーエクササイズの活用 エクササイズの最初に 全身の感覚の確認を行ってから、ローラーに乗ることで、エクササイズ前後での違いがわかるようにします。 安全にエクササイズができるように、周囲に気をつけ、ローラーへの不快感や不安感をなくすようにします。 ![]() ![]() 膝は立てたまま、少し両手を広げて安定を保ちます。 顔面の筋の緊張をゆるめます。 背中にローラーが当たって痛いようなら、ソフトポールを使ってもよいでしょう。 ぐらぐらして、力が入ってしまうときには、半円柱状のローラーを使い、平らな面を床に向け、その上に乗ると安定してエクササイズを行うことが出来ます。 さらに、平らな面を背中に当てるようにすると、より不安感を少なくできます。 顔、首 リラックスした感覚を身につけるようにします。 ![]() そして、ふっと力を抜きます。 ![]() このとき、後頭部がフォームローラーに自然についた状態にして、首には余計な力を入れないようにします。 上肢 ローラー上で上肢を動かすことで、コアに刺激を入れます。 慣れると、動きがスムーズになってきます。 ![]() ![]() 両腕を同時に持ち上げてもよいでしょう。 ![]() このとき、首が自然に動くのを妨げないようにします。 ![]() 体幹は自然と捻られ、ローラーは上げた腕の逆方向に転がっていきます。 両手で繰り返します。 ![]() 同じ方向に転がしても、写真のように別々に転がしてもよいでしょう。 ![]() 反対側の手でも行います。 ![]() |